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医療機器に関する規制の動向
医学翻訳、薬事申請翻訳、看護翻訳、介護翻訳、医療翻訳担当のY.O.です。
昨日、医療機器(medical device)の団体が都内で主催された、医療機器の承認・認証申請等に関する説明会に参加しました。翻訳者には直接関連のないトピックもありますが、医療機器に関する規制の動向や現場の状況を知ることができる良い機会が得られました。
「薬事(Pharmaceutical Affairs)」の業務は、日常生活で直接触れる機会はあまりありませんが、このような講習会の参加者で大ホールが満席に近い状態になるのを見ると、日本の医療機器業界がどれほど多くの方々に支えられているか改めて実感します。
開発者がいなければ、医療機器がこの世に出ることはありません。また、マーケティングなくして、医療の現場で私たちが医療機器の恩恵を受けることはできません。これらと同じくらい重要な役割を果たすのが薬事の業務で、どんなに素晴らしい医療機器が開発され、優れたマーケティング体制が整っていても、日本で製造販売するための届出、認証、承認等の手続きが完了しなければ、医療機器が国内で市販されることはありません(治験[clinical trial]や医師の個人輸入という形での使用はありえます)。そういう意味では、開発は医療機器メーカーの脳でマーケティングは四肢であるとすれば、薬事は医療機器メーカーの心臓と例えても過言ではないと思います。
本邦における「デバイス・ラグ(device lag)」の解消に向けたさまざまな取組みについては、以前のコラムでも一例をご紹介したとおりです。審査側の体制や審査期間の短縮に関する公表された数字を見ても、着実に成果を上げているようです。
このような審査側の対応に加えて、「医療機器」に対する規制のあり方そのものを見直そうという動きが進んでいます。現在は、「薬事法(Pharmaceutical Affairs Act)」の中に、医薬品に類するものとして医療機器に関する記載があります。しかし、医療機器は、一旦開発された後、実際に医療現場のニーズや使用する医療従事者の声などを取り入れ、改良を加えながらさらに開発を進めていくものです。医薬品とは異なる、このような医療機器の特性を踏まえた規制の構築を目指して議論が重ねられており、薬事法の中で医薬品とは別に医療機器に関する章を設けることも検討されているそうです。
その他にも、審査システムそのものを合理化することにより、審査をより迅速にしていくさまざまな案も検討されています。
大きな流れの一つとして、これまで「官」である厚生労働省や医薬品医療機器総合機構が行っていた審査業務等を、リスクなどを考慮した上で可能な製品群については基準を設けてできる限り民間の第三者認証機関に移行していこうという流れがあります。審査の迅速化、ひいてはデバイス・ラグ解消につながる動きではありますが、医療機器の使用者となる立場の私たち一人一人も、関心をもって動向を見守っていく必要があると思います。
私事ですが、先日、20年ぶりに新たなピアスホールを一つあけました。20年前に初めて海外でピアスホールをあけた時は、それが日本では医療行為(medical practice)にあたることさえ知らずに、「何か問題が起きても一切異議申し立ていたしません」という文言の書面に署名し(今思うと少し怖くなります)、店員さんにあけてもらいましたが、今回は皮膚科でピアスホール作成用の機器(「穿孔器」と記載されていました)のラベルをじっくり読みました。その時に初めて、それが「一般医療機器」に該当し、届出という手続きによって日本で製造販売されていることを確認しました。滅菌済みの機器だけど滅菌期限が記載されていない・・・滅菌は本当に大丈夫?などと少々気になりつつ、無事にピアスホールが完成する日を待っています。コンタクトレンズ、「医療機器」として製造販売されているマッサージ器や磁気ネックレス、血圧計など、さまざまな医療機器が日々の生活を支えています。自分の生活に係ってくるものとして関心をもち、使用者として収集した情報を基に考え、選択する責任が求められる社会へと向かっているように思います。